日本で一番厳しいトライアスロンの大会とも言われる
佐渡国際トライアスロンに参加してきました。
中でも最も距離の長い「Aタイプ」は、
スイム4km、バイク190km、ラン42.2km
トータル236.2kmを制限時間内に制覇した場合、アストロマン(宇宙人)の称号が与えられる大会です。
今まではこれより半分の距離のミドルやオリンピックと同じ距離のショートのトライアスロンに参戦していました。
半分とは言え、2km泳いで100km漕いで20km走れば十分な距離です。
けれどコロナ禍で東京オリンピックを始め、様々なスポーツの大会やイベントが延期または中止される中、
みなさんと同じように、私も個人的に色んな出来事があり、遂にロングに挑戦することにしたのです。
これはヨガインストラクターとしての仕事に大きく影響が出ます。
特に私のように現代ハタヨガをメインとして指導している人には筋肉の状況が適さず、アーサナを深められなくなるからです。
仕事との両立をどうするかも課題でした。
でも出場すると決めた以上、この3年間淡々とトレーニングを続けてきました。
目標はまずは完走なので、各種目をどのくらいのペース配分でこなすかだけを考えてきましたが
本番になると思い通りにはいかないもの。
思い通りにいかない時の自分の反応も、トライアスロンの醍醐味です。
以下、自分の回想記録としても書き残します。
「スイム」
ロングの大会は、ミドルやショートと違い、競技の時間も距離も長いので、選手は無駄なエネルギーを使いたくないもの。
なので、バトルと呼ばれる、殴ったり蹴ったり押したり引っ張ったり、人間の醜さ溢れる海の中のポジション争いが無いと聞いていたので、後方からゆっくりスタートした、つもりでした。
けれど、なんとスタート早々、バトルに巻き込まれてしまったのです。
ゴーグルが外れ、視界がぼやけ、一度立ち泳ぎでレスト。
ここでリタイヤしたら、何にもせずに終わってしまう。あり得ないです。
バトルは他の大会で何度も喰らっていたので、焦ることはありませんでした。
選手の皆様、アヒムサー(非暴力)、アパリグラハ(貪らない)で参りましょうと毎回思います。
足がつかない海上で、ゴーグルを掛け直し、視界と呼吸が戻るのを待ちます。
けれど呼吸がなかなか戻らない。ただただ時間が過ぎていきます。
ほかの選手がどんどん進んでいく中、私は海上でただただ立ち止まって呼吸を整える。
呼吸を整えるのは職業上、得意なはずです 笑
レスキューの人も心配そうに見守ってくれていました。
今思えば、違反ではないのでレスキューボートに捕まらせて貰えばよかったな。
もう誰もいなくなって、そろそろ大丈夫かな、スイムの時間制限に間に合わなくなったら大変だな、
とぼんやり思いながら、スイム再会。
今回は2kmのコースを2周回だったのですが、私が1周終える頃にトップ選手は2周終え、バイクに向かっていました。
それでもマイペースに泳ぐ。焦らないのが大切。特に泳ぎが得意じゃないならなおさら。
1つ1つを丁寧に。確実に。
今回は穏やかで透明度もほどほどあり、水温も高く、泳いでる魚も見えて、海コンディションは最高でした。
「バイク」
スイムから上がるとバイクです。
バイクが置いてあるトランジションエリアには、ほとんど誰もいませんでした。
いつもならトライスーツと言って、スイムもバイクもランもこれ1つで済むウエアを着るのですが、
今回は少しでもストレスを減らすことを優先し、各種目ごとに快適なウエアに着替えると決めていたので(そんなタイムロスすることをする人は基本いません)、
お股が痛くならないようにシャモアクリームを塗り、バイク用のウエアに着替えて、バイクスタート。
ほぼビリスタートなのに、呑気に着替えてる私を心配そうに見る審判を横目に、190kmの佐渡一周に旅立ちました。
天気がよく、キラキラ輝く日本海の眩しいこと。
壮大な滝や断崖、稲刈り時期のたわわな稲を見ながらのバイクが最高のご褒美。
左は海。右は田園。潮の香りと稲穂の香り。たまりません。
ほとんど車も通らないので、キープレフトで自由に心置き無くTTポジションが取れます。
水分補給ができるエイドステーションは全部で9ヶ所。
そのうち、食事(おにぎり)があるのは2ヶ所。
普通は自転車を漕ぎながら、空のボトルを設置されたゴミ箱に投げ捨て、
代わりに水やアクエリアスの入ったボトルを受け取り通過するのですが、
私は転んだり焦ったり他の選手とぶつかったりしないよう、
いちいちバイクを止めて降りて、サスティナブルに自分のボトルに補給してました。
かなりのタイムロスになりますが、今回は完走が目標なのでこれでいい。
走っている時にしっかり回してスピードを出せばいい。
出場前は190kmも漕いたことがなかったのでバイクパートが一番心配だったけれど、
実際に佐渡を走ったら一瞬で不安が自信に変わりました。
ここがこの大会で最も面白かった自分の心の変化の瞬間でした。
トレーニングの時より数段良いホイールに履き替えていたのと、そもそも登りには強いので(佐渡のバイクコースは獲得標高が多少あります)、タイムマネージメントはできると根拠のない自信が沸々と出てきたのです。
後で結果を見たら、こんな呑気にエイドで休んでも確かに450人くらいは抜いている。
これはさすがに想定外で自分でも驚きました。
バイクで苦しかったのは、ゼリーなんかのスポーツ用の補給食を摂取しなければならないこと。
距離が長いので、ハンガーノックにならないよう、20km毎に漕ぎながら補給食を食べます。
量が少なく、消化しやすく、吸収しやすい、高カロリーの補給食。
実はこれが何より苦手。食べたく無いのに食べなければならない。
ここで自分とのおしゃべりが始まります。
なんのために漕いでるんだろう。食べたく無いのに無理矢理補給してまで漕ぐ理由は何なんだろう。
人は生きるために食べるのであって、漕ぐために食べるのではない。
景色が綺麗だな。のんびり漕いでカフェで休憩しながら一周の方が楽しいんじゃないかな。
なんて頭で考えながら、ゲップしてでも食べる。食べないと動けなくなるのはわかってる。
そんな脳内おしゃべりをしていると、地元のおじいさんおばあさんが太鼓を叩いて応援してくれている姿が。
本当、補給食より元気もらえるのではと思う瞬間です。
100kmを超えると、お股痛い問題が発生。想定内です。
後半はTTポジションで少しずつお尻をずらしながら、ほぼ前傾姿勢でした。
ヨガしててよかった。前屈よ、腸腰筋よ、ありがとう。
「ラン」
ようやく自転車を降りたらフルマラソンが待っています。
ランは3種目の中で一番得意だから大丈夫。地に足がついた瞬間からゴールを確信するはず。
と思っていました。
今度はランニング用のパンツに履き替えてスタート。
しかし実際、走ろうと足を前に出しても、足が上がりません。
あれ?痙攣はしてないよね?私の太ももに10kgくらいの重りでもついてる?
そんな初めての感覚に戸惑いながら、190kmも漕いだから足が慣れるまで待とう、と
とにかく一定のリズムで足を前に進めました。
どんなに遅くても歩かないと決めていたので、たとえ歩いてるのと同じくらいのスピードでも走る。
今回は7kmを6周回するという地獄のようなランニングコース。
他の大会でも、周回するコースの大会は飽きてしまうので出場を避けるけれど
コロナの影響もあって開催してくれるだけありがたいのです。
1周終え、2周目に入ってもいっこうにスピードは上がらない。
これはまずい。この足は何なんだ。シューズの選択も間違えたな。足の爪も剥がれてきた。
想像以上にバイクで足を使ってしまったようです。これは想定外でした。
予定ではどんなに遅くても4時間半でいけると思っていたのに、5時間半もかかってしまいました。
ランの中で幸せだったのは、新米の塩おにぎりが食べられたこと。
実は、バイクのエイドステーションではおにぎり無くなってしまっていて食べられなかったのです。
ゼリーはもう胃に入りません。日本人なら米だ。しかも個包装してくれている。
いっぺんに1個食べるのは辛いので、ポケットに入れて3回に分けて食べ、合計2、3個は頂いたでしょうか。
人はおにぎりを食べると幸せと元気をもらえることを再確認。
動かない足を引き摺って、ゴールしました。
制限時間20分前にゴール。達成感より安堵感。
全部出し切って、倒れ込むゴールを目指したかったけれど、今回は完璧に自分をコントロールし切ってしまい、
がむしゃら感はあまりありませんでした。
ずっと冷静に状況を判断できるというのは一番大切だけれど、ここはヨガではない。
スポーツは喜怒哀楽を楽しんでいいはず。
だから本当のトライアスロンロングの面白さを私はまだわかっていないのだと思います。
トライアスロンの奥深さは、こんなものじゃないはず。
たくさん自分の課題が見えた大会でした。
まだまだやり残したことがあり、すぐ次の大会どうしようと考えている自分がいます。
次の大会では、すべてを出し切る。を目標にしたいと思います。
とてもとても長い文章、お読みいただき、ありがとうございました。
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